八咫烏《ヤタガラス》



ふーん、とその場で足を止め、その場を観察をする。


危機察知とでもいうのだろうか。近づいたらだめだ、と本能がそう伝える。


ここは裏路地で、道幅はそんなに広くない。


今行ったら、確実にあたしも絡まれ、巻き込まれるのが目に見えて分かったから。


触らぬ神に祟りなし。


憤る相手に自ら近づくなんて、馬鹿のやる所業でしょ。


冷静に脳がそう判断を下す。


巻き込まれるなんてごめんだ。そんな面倒なこと、他所でやってくれ。


幸運にも、多分というか確実に、彼らはあたしの存在に気づいていない。


だから、ここはUターンして大通りに戻るのが正解。


なーんて、考えていると、彼女は男に襟元を捕まれ、壁に押し付けられた。


あらら、穏やかじゃないね、と少し同情する。


ていうか、そもそも、そんな学校の生徒、もといお嬢様が、護衛の大人もなしに、こんな時間に、それも裏路地に何故いるのかも分からない。


意味わからんわ。


あたしが言えたことじゃないけど、金菱のお嬢様は、静かにお家でお勉強するお時間でしょう?


それに、何があったら知らない人に絡まれるわけ?


あたし、ここ何度も通ってるけど、喧嘩売られることはあっても、そうやって、壁に押し付けられる経験なんてした事なんだが。