八咫烏《ヤタガラス》



「や、やめて、ください」


「おまえ、金菱の生徒だろ?金菱のお嬢様、いつか食ってみてぇって思ってたんだよ」


図体の大きい男と、その男によれば、金菱の生徒らしい、か細い声の女子高生…多分。


街灯のない真っ暗な路地ということもあり、ぼんやり男と女が見えるくらいで、あまり情報は得られない。


それにあたし、視力悪いし。


スっと目を細め、よく見れば、さっきよりは、見える二人の影。


あたしも歩を進め、少しずつ近づいているため、ぼやけた遠くの視界が徐々に見えてくるっていうのもあるんだけど。


ぼやける視界で見え、わかったのは、女の着ている服が真っ白のワンピース型の制服だってこと。


ん?もしや?一瞬の疑念があたしの中に生まれるが、それはすぐに確信に変わる。


絶対そうだ。見間違えるはずも無いじゃん。


だって、あれは、あたしの高校の制服なんだから。


格式高く、歴史や伝統が強く残る、この辺りでも有名なお嬢様学校。名門、金菱(かなびし)女学院だ。その制服に間違いない。


なんでこんなところにいるかな、と呆れたように溜息が出る。


男の方は、図体がでかいくらいで特徴はあんまり無さそう。


まぁ、背中しか見えていないし、よく見えないってのもあるけど。