軽く巻いた前髪が風に揺れる。
飛ばされた前髪を直すように、スっと手を伸ばす。
「なぁ、蛍(ホタル)。その手、どうした?」
「え」
自分でも、動揺している事が、手に取るようにわかった。
祈織が気づくことが、予想外で、つい驚きの声が漏れる。
いや、え?何故バレた?
他人に興味がない祈織が気づくことが想定外すぎて、動揺が隠せない。
実は、朝起きた時点で、右手の中指の付け根の骨の辺りが薄っすらと赤黒くなっていた。
理由は分かっている。確実に、昨日、impulseの第捌席の人を思い切り殴ったからだろう。
それを隠すように、ファンデーションやコンシーラーで隠したわけだが。
最後の方に面倒だし、時間ないし、まぁこれでわからないだろうし、いいよね、と少し投げやりにしてしまった。
だから、一応、隠れているけど、うまく隠せていないのだ。
よく見ればわかるし、喧嘩してきた人、わかる人にはわかるのかもしれない。まぁ、正直、金菱のお嬢様たちに見せたところで、喧嘩でこうなったなんてわかる人はいないだろうし。
ナメていた、んだと思う。
まぁ、まさか祈織にバレるとは思ってなかったけど。