八咫烏《ヤタガラス》



「そうだね。あたしが“八咫烏のケイ”」


ハッキリと言葉にすると懐かしさが溢れ、嫌でも当時のことを思い出す。


八咫烏…ポツリと呟く彼はまじか、と驚いている。

信じてないのかもね。まぁ信じないのは当然かもしれない。


だって、あたしが八咫烏の一翼だったってことを証明できる証拠は今、何も無いんだから。


まぁ唯一、証明となるのは、あたしが八咫烏だと肯定し、名乗ったこと。


いくら2年も前のことであっても、八咫烏の名前を嘘でも借りるとする人がいるならば、それは大馬鹿者だ。


それだけ、八咫烏は、影響力が大きい。たとえ時間が経っていようと、ね。


「でも、八咫烏って解散したんじゃ…」


「そうだね。解散というか、消滅というか…。


言葉を濁す。だって、よく知らないし。ただ、いろんなことが重なって、あたしは八咫烏から降りた。


抜けてからのことは、調べなかったし、知ろうとも思わなかった。


だって、あたし自身が、八咫烏を避けていたから。


ただ、毎晩、街の何処かで聞いていた八咫烏という名前は、ある日からパタリと聞かなくなった。


そして、仲間の1人から、ひとり、またひとりとメンバーはあの場所には訪れなくなり、もう誰も来なくなって解散したという事実だけを解散後、数ヶ月したのちに聞かされた。


まぁ、要は自然消滅ってやつだ。