「”ケイ”か…いや、そんなわけないよな」
チラチラとこちらを見ようとする男の動きに気づく。
とはいえ、背後をあたしがとっているんだから、こいつは容易にはあたしを確認できないだろう。
納得したようなしていないような、確認したくて堪らない様子が伝わる。
それだけ、彼は“ケイ”という人を知りたいということ。いや、彼だけではないか。
まぁ、振り向いたところで、あたしはこのダボダボパーカーのフードが顔を隠すだろうから、認識はできないだろうけど。
それに、今、正体を告げたところでどうにかなる訳じゃないよな。そう思って、再度口を開いた。
「やっぱり真っ黒の服着ないと分からないかな?それとも、もう2年も前のことなんて昔すぎて、覚えてない?」
「っっ!やっぱりおまえ、八咫烏の…」
自分たちで名乗った訳では無いが、世間はあたしたちを八咫烏《ヤタガラス》と呼んだ。
まぁ《カラス》と名乗ったのは、あの馬鹿だけど。
「あ、知ってるんだ?」
「本当に八咫烏の…」
振り向こうとする頭を後ろからツンと人差し指で制止させる。

