八咫烏《ヤタガラス》



「おまえ何者だ?」


「何者と言われましても」


「どこの族のヤツだよ、おまえ」


答えを急ぐように言葉が紡がれる。


「族とかグループとかは入ってないよ」


まぁ今は、だけど。


静寂の中で放った言葉は、はっきりと輪郭を持っていたが、キャッチの騒ぎ立てる声にかき消された。


「おまえ、名前は?いや、これだけ強いなら通り名とか、あってもおかしくねぇだろ?」


名前、ね。ここで聞かれているのは本名とかそういうのじゃない。


なんとかの闘犬とか、どこどこの狂戦士とか、そんな勝手に付けられた厨二病チックなチームや個人を特定できる呼び名のことだ。


なんでこうも厨二病爆発した名前をつけるんだろうね。


勝手に付けられ、勝手に呼ばれ、きっと恥ずかしいだろうね。


「通り名なんてそんな特別なもの、あたしには無いよ。欲しくもないけど」



まぁ昔は仲間たちからは、"ケイ"なんて呼ばれていたけど、と過去を思い出し、ポツリと口から零れた。


って、何そんなこと言ってんの、あたし。


いくらあいつのことを思い出したからといって、こんなことほとんど知らないやつに漏らすなんて、馬鹿か。