八咫烏《ヤタガラス》



ぺたんと膝を地面に着き、あたしから一本取られたことに気づくと、は、と驚いた声を彼が漏らす。


近づいたことで聞こえる、心臓の響きからも驚きや衝撃がわかる。


でも、もう遅いよ、反応も反撃も。何もかも。


さっきまで食べていた団子の竹串を取り出し、そっと彼の首に当てる。


これはもう、決定打。チェックメイトだよ。


「第捌席っていう割に、ね?」


相手を煽ると同時に、あたしの心臓もバクバクとうるさいことに気づく。


緊張ではない。興奮だ。このスリルに、身の危険に、興奮しているんだ、あたしも。


駆け引きすること、殴ること、煽ること、絶望を与えること。


前は、当たり前のようにやっていたことでも、数年の月日があけば、こんなにも興奮するんだ。


殺るか殺られるかのそんなスリルを単純に楽しんでいた。懐かしいこの感情の昂りを久しぶりに感じる。


「てっめぇ」


そう叫ぶ声は静寂に包まれた暗く細い路地によく響く。静と動とでも言うのだろうか。


先程とは打って変わった空気感の中で、唯一変わらないのは表通りのおちゃらけたキャッチの声だけだ。