23時を少し過ぎた頃。



駅前の大通りから一本路地を入れば、そこは危険地帯と化す。


その場所は、真っ暗な裏路地。


月明かりの細々とした光と、自動販売機の光、大通りから仄かに漏れ出た光だけ。



それだけがその場を照らす光。


ほとんど光なんて入ることのない闇。


そして、複雑に入り組んだ道。


多くの人が方向感覚を失い、視界の悪い暗闇の中を彷徨う。


そんな闇夜に迷路と化す道は、暴行や人攫いが多発する危ない場所として有名だ。


数年前、ある一部では"悪魔の出る道"と呼ばれていたほど、悪い意味で噂の絶えない場所だった。


普通に考えれば、大半の人は通りたくない、いや通るべきでない道であり、喧嘩や刺激に飢えた野獣たちの、言わば巣窟だ。