「提案なんですけど、あたしと1対1でタイマンしません?」
この裏路地の空気を支配したかのように、あたしの声でこの場が静まり返る。
うん、想定通り。意表を突かれた、その言葉が正しいように、ポカンと固まるタイマン相手(仮)。
「俺とおまえのような小娘が?」
あたしを馬鹿にしたように笑う。
まぁそれもそうか。一回りも体格差ありますもんね。こんな小娘なんかに負けるはずないじゃん、って顔に書いてありますよ。
「はい。だって、あたしみたいなクソガキに女の子逃がされて、お兄さん悔しいでしょう?だから、タイマンで決着でもつけないかなぁと思って」
少し、また煽りを入れれば険しくなる顔。
「おまえが逃げないならな」
「逃がす気ないくせに、よく言いますね」
へへっとあたしが笑えば、彼の眉間は凄いことになっていく。あーらら。怖い怖い。
「さてと。じゃあ、いつでもどーぞ」
自分で言った言葉と共に、少し踵を上げ、手を軽く構え、すぐ応戦できる体勢を整える。
「おまえ、調子乗ってんじゃねぇぞ」
「えー乗ってるように見えてるのかぁ。そっか、そうなのか。知らなかったわぁ」
さらに少しずつ相手を煽る。
怒りの感情は我を忘れるいいスパイスになる。
怒りの感情は欲を引き立たせるには持って来いだ。
怒りの感情ほど、操るのに便利な感情は他にない。それを身をもって、知っているから、利用する。
そんな考えとともにあたしの中で芽生えるのは、度を越えた興奮と襲ってくる若干の不安。
久しぶりの喧嘩だから、きっと_____
昂っている。

