八咫烏《ヤタガラス》



喧嘩_______は出来ないことは無い。


ただ数年のブランクがあり、自分の思った通りに身体が動くか分からない。


不確定な不安分子であることは確か。勘が、若干だが残っているのが幸いだ。


「ねぇ、一つ質問していい?」


質問なんてしたところで、多分、怒りで頭が沸騰し始めてるこの人は、答えてくれないだろう。


それを承知の上で、話しかけたのは、少し時間を稼ぎたいからだ。


この場をどう切抜けるのがベストな選択か考える時間が、少しでいいから欲しい。


勝てるって直感はあっても、確信は無いから。


多分、不安。いや、憂慮なんだと思う。


負けるのがわかる喧嘩なんてやりたくないし、やられるのがわかっているなら、無駄な喧嘩は避けるのが賢明。


賢く生きるって決めたから。例え、それが、賢いフリだとしても。


「は?質問?いい訳ねぇだろ、馬鹿か」


「即答ですか。そうですか。でも、ひとつくらい聞かせてくださいよ。なぜあの子なんです?」


聞けるのであれば、聞きたかった。あの子に何度も降りかかるっていうなら、話は別だから。


「質問させねぇっつただろ?耳ついてんのか?」


あらら残念。微塵も残念そうでない声で言って、あたしの眉が少し下がる。


内心、聞き出しておきたかった気持ちはあるけど、無理なものは仕方ない。


うん、大丈夫。まだ冷静だ。


まだ、客観的に捉えられている。


大丈夫、我を見失っていない。