八咫烏《ヤタガラス》



彼女の表情をちらりと確認する。あと、もう一押しってところか。


「あ、もしかして、合意の上だった?それなら、邪魔したね」


数秒固まり、言葉の意味を理解する。彼女は結論を出した。


「全然、合意じゃないです。その、ありがとうございました」


そう言って、深々と頭を下げ、大通りに向けて走り出した。うん、ナイス判断。


逃げることは決して悪いことではない。


相手の技量を理解したからこその行動なら、賢い判断だとあたしは思う。


あたしは、彼女にヒラヒラ〜と手を振り、その背中を見送る。


_____ねぇ、**。


あたしはあんたへの恩を少しは返すことができた?


きっとあんたは、恩?なにそれ知らなーい。なんて馬鹿みたいに笑うだろうけど。


頭に懐かしい顔を思い出し、やっぱりあの子、あんたの妹だわと思う。


舌打ちが聞こえ、ふと現実に戻る。


まぁそれもそうか。まんまと獲物逃がされたわけだし、怒って当然だ。


さて、ここからどうしたものかな。


彼女を逃がしたはいいけど、これから先の策がある訳でもない。


きっと、何もせずに解放してくれるわけは無いだろう。


そんな甘いこと言っていられる相手ではなさそう。ガチギレしているみたいだし。