「見て、来たよ。」
「ほんとだ、相変わらず目付き怖〜。」
そんな言われ慣れた言葉が、背中を伝って耳に届く。
生まれつきであるつり目気味の目は、小さい時からよく怖がられていた。
手で胸元まで伸びたロングヘアを雑にはらいながら、両耳にしていたワイヤレスイヤホンを外した。
ドアを開けると、一気にクラスのざわめきが消え、全員の目線が私に集まった。
正直申し訳なさすら出てくるが、私は気にしていない振りをして堂々と教室に入る。
誰にも声をかけられないまま、無言で一番後ろの窓側である自分の席に着くと、ようやく教室のざわめきがもどり、安心する。
昨日までずっと気が楽な夏休みを送っていた私、優希麗愛(ゆうきれあ)は、今日からまた退屈な学校生活が始まるのかとため息をこぼした。
チャイムがなると同時に、担任である佐々木先生が教室に入ってきた。
今年で教師歴五年の、若い男性の先生だ。
若いくせに、律儀なメガネを掛けて時間厳守がモットーの変わった先生だ。
「はーい、席つけー。」
クラスの人達がだらだらと席に戻っていく。
「もう知ってると思うが、今日は____」
「すいません!遅刻しました!」