「美羽先生、今日は失礼します。翔子行くぞ」

 啓太の父は、なぜか焦ったようにふたりを連れてマンション内に入っていった。

 状況はわからないが、匠と同じマンションに園児の身内が住んでいるとわかったからには、細心の注意は必要だ。

 何か、誤解をされている気がする。啓太の母親がこんなに近くに住んでいた事も驚きだ。一緒に住んでいなくても、こんなに近いならお迎えに来ても可笑しくないのではないか?

 複雑な事情があるのかも知れない。

 深入りするのは良くないだろう。このまま何もなければいいのだが……。

 匠も以前、啓太の父親と面識があるため、伝えた方がいいと判断した。

「匠、啓太くんって覚えてる?」

「美羽に恋人がいるか聞いた父親の子だろ?」