「弟くんは、知っててくれたみたいだな」

「知らなかった私が悪いみたい」と美羽は口を尖らせる。

「新鮮だったよ」

「恥ずかしい」

 この後、両親も美羽から彼氏を連れてくるとは聞いていたが、その彼氏が将棋界のプリンスだとは知らされていなかったので、白石家は大騒ぎになった事は言うまでもない。

 美羽の父親の趣味は将棋だ。

「匠くん、プリンス相手に恐れ多いのだが、一局相手をしてもらえないか。手加減はしなくていい」

「はい。もちろん喜んで」

 美羽の父親も、仲間内では強いと言われているが、プリンスとは格が違う。

「参りました……」

 一瞬で撃沈するのだが、なぜか嬉しそうだ。いつか、公に出来るようになったら、仲間に自慢するらしい。

 白石家にも、大歓迎されたのだった。