美羽の実家の前にタクシーが止まった瞬間、弟が玄関から飛び出して来た。

「姉ちゃんおかえり〜」

「空ただいま」

 美羽が先にタクシーから降りたので、空には男性の姿は見えてなかった。両親には連絡をしたが、空は彼氏を連れて来ることを知らされていなかった。

 そして……。

 お支払いをして、美羽の後ろから現れた匠を目にした瞬間、ポカンと口を開け動きが止まった。

「こんにちは」

「……」

「空?どうしたの?」

「プ、プ、プ……」

「プ?」

「プリンス〜」大声で叫ぶ弟の口を思わず手で塞ぐ。

「空、近所に聞こえるから。とにかく家に入るまで叫ばないで」

 コクコクと何度も頷いたのを見て、手を離した。

 次の瞬間……。

「母さ〜ん」

 空は実家に駆け込んで行った。