ふたりは、いつの間にかリビングのラグの上で寝てしまっていた。寝返りをうったタイミングで美羽のスマホのアラームが鳴った。美羽は、匠が起きないように慌てて止める。

 匠は、今日は予定がないと言っていた。昨日のびしょ濡れの様子はただ事ではなかった。ゆっくり寝かせてあげた方がいいだろう……。

 よく寝ている匠に布団を掛け、仕事に行く準備をする。この日は、朝から匠の対局のニュースが放送されていたが、美羽はあまりテレビを見ない。そして、当の本人はよく眠っていて見ることはなかった。

 出勤時間になり、鍵は締めてポストに入れてくれたらいいとメモに残し、美羽は出掛ける。きっと帰って来る頃には、匠も帰っていないだろう。

 もう一度、美しい匠の寝顔を見て、マンションを出た。