身体の芯まで温まり心まで温まった。真っ暗闇の中を彷徨っていたが、優しい女性に出逢えて良かった。今日は対局を含め一日が散々だったが、最後に救われた。

 声は若そうだったが、まだ姿すら見ていない。顔すら知らない他人の家でゆっくりお風呂に入っているなんて、信じられない。

 厚かましく長風呂をさせてもらい、体調を崩さず済みそうだ。

 脱衣所には、バスタオルと黒のスウェット上下と、新しい下着を置いてくれている。本当に感謝しかない。

 着替え終わって鏡を見ると、温まって頬がほんのり赤くなっているいつもの匠の姿が映る。首からタオルを引っ掛け、緊張しながら奥の明かりの漏れる扉に向かった。

 そして、そっと扉を開けた……。