絢なすひとと

こんな素敵な男性の運転で送ってもらえる機会なんて、人生でそうそうないだろう。
単調な毎日の中で起きた思いがけない出来事に、内心テンションが上がってしまっている。

カッコいい人は、運転している姿もやはり(さま)になる。
横顔をちらりと眺めると、すっきりと整ったフェイスラインと鼻筋に一瞬見とれてしまった。

欠けているところがない。これがエリートと呼ばれる、選ばれた人たちなんだろうか。住む世界が違いすぎて、想像がつかなかった。

七尾さんは、そんなわたしにさりげなく話題を振ってくれた。
「森崎さんは、今のお仕事は何年かやっているんですか?」

「あ、いえ、まだ半年くらいです。大学を卒業してから、ブライダル専門のプロデュースをしている会社に四年くらい勤めていたんですけど。その会社が…畳むことになってしまって」
言葉にすると、胸の奥がまだツキンと痛む。

彼がわずかに眉をひそめて、こちらに気づかうような視線をよこすのが気配で分かった。