それにしても、美幸先生の着物姿のこなれていることといったら。

今日は引き染めの(つた)の柄の奥州小紋に、辛子色の麻の帯、そこに燕脂(えんじ)の帯締めを合わせている。
髪はグレイヘアを、ざっとひとつに結い上げているだけだ。

こういった着物の名称や用語のひとつ一つも、美幸先生から教わっているのだ。
ちなみに六月の今は、着物の暦では単衣(ひとえ)の時季ということになっている。

見習いのわたしは、着物のコーディネートの手本通りという感じで、紫陽花(あじさい)の単衣の小紋に、薄青の絽綴(ろつづれ)の帯という組み合わせだ。

ほづみ屋に入社するまで、わたしの着物との縁は非常に薄かった。
ブライダル業界で働いて、多少和装を目にする機会はあったものの、自分で身に付けたのは人生で三回だけ。
七五三と成人式と大学の卒業式、とまあ世間一般の女性と同じ程度だ。

こうして着付けを習い始めたものの、まだまだ着物に着られている感は(いな)めない。

日頃から着物を身につけていることが多く、日本舞踊も名取の腕前という美幸先生の、力みのない “粋” な着こなしができるのはいつになることやら。