2人の未来と神様の声

あれから、いろんなことがあった。

その先輩とは付き合うことはなかったけれど、他にも私を好きだと言ってくれる人はいて、何人かとお付き合いもした。

中には、プロポーズをしてくれる人もいた。

けれど、なぜかその人との未来を想像することができなくて、私は今も1人のまま家と会社を往復して過ごしている。


そして、毎年、桜が咲く季節になると思い出すんだ。

あの、枝垂れ桜の下で体験した幸せな瞬間と不思議な出来事を。


今年もソメイヨシノの開花宣言のニュースが流れ始めてから、私が気になっていたのは、あの寂れた神社の枝垂れ桜のこと。

どうして私は、もっとちゃんと光に説明しなかったんだろう。

どうして分かってもらえるまで、ちゃんと話さなかったんだろう。

どうして……

繰り返しても仕方ない後悔が、今もまだ胸の奥で渦巻いている。



あの頃、手を繋いで一緒に上った石段を、今日は1人で上る。

息が切れて、途中で休憩したくなる。

こんなに大変だったかな?

あの頃は、もっと軽々と上ってた気がするけど。

私は、一休みして深呼吸をすると、再び上り始める。

そうして相変わらず鬱蒼と生い茂った薄暗い境内に足を踏み入れると、薄ぼんやりと点った街灯の先に、あの枝垂れ桜が見事に満開の花を咲かせていた。

「綺麗〜」

私は、あの頃のように枝垂れ桜に駆け寄る。

ここで、光と初めてキスをした。

あの頃が1番幸せだったな。

本当なら、今頃、光と結婚して、子供もいて、2人で交代で抱きながら、あの石段を上ってたはずなのにな。

なんで別れちゃったんだろう。

後悔しても仕方ないけれど、考えずにはいられない。

あの時の神様は知らなかったのかな?
私たちが別れちゃうって。
神様なのにね。

私は、あの時の声を思い出そうとするけれど、全く思い出せない。

声が男だったのか女だったのか、それすらも分からない。