―――リル姫は、知っている。

アリスが侵入者だという事を。


「答えろ、女中。」


リル姫は立ち上がり、アリスの腕を強く掴んだ。
その瞳が余りにも冷酷すぎて目が離せない。

逃げなければ。
助けを呼ばなければ。
任務は失敗。
早く、逃げなくては。

けれどそれができない。
ただ冷や汗が背中を伝うだけで、足はぴくりとも動かない。


「何を言っているの、お姉様!?
女中の方にそんなことを尋ねたら失礼だわ!」


「黙れ。」


その棘のような声にアリスは体を震わせた。

エヴァ・イニーネは実の妹ではないのか?
なのにその口ぶりは、まるで何か憎悪の固まりをぶつけているような・・・。


「貴様の目は節穴か?
この女中はこの城の人間ではない。外部からの侵入者だ!」


リル・イニーネがそう言い放った瞬間に、式場がざわめき立った。
国王と女王すらも衝撃の表情を見せ、すぐに辺りから衛兵が沸いて出た。

ニンムハシッパイシタ。


「小娘よ、貴様はどこから来たのか。
スパイか?我々の命が目的か?答えろ、小娘!」


アリスは強く目を瞑り、強く願った。





ハニー・・・助けてっ!!!!