「アリス嬢、行きますよ。」


突然そんなことを言われ、アリスは戸惑う。


「えっ!?何なに!?」


「掴まって!!!」


するとハニーはアリスを抱きかかえ、窓を突き破って外へと身を投げ出した。


「ハニー!」


アリスはそう叫んでハニーの体を掴むのが精一杯だった。
ガラスの破片が外へと飛び散り、二人は城のてっぺんから真っ逆さまに落ちて行く。

アリスはぐっと目を瞑った。


「アリス嬢、願って下さい!
ここから逃げ出したいと、助かりたいと!!!」


アリスは強く願った。

死にたくは無い。
助かりたい。

どうか英知の塔へ―――。



すると二人を眩いばかりの光が包み、それが強い光線を放つように辺りを包んだ。

まるで一瞬何かが光ったように。
強い光が辺りを覆い、すぐに夜の闇が戻った。


空中にいたはずの二人の姿は無く、空には無数のトランプカードが舞い散っていた。


クイーン・ハートネスは堪らず窓から身を乗り出すが、どこにも二人の姿は無い。
ただトランプが夜の空に舞うだけであった。


「小癪な・・・!!!」


クイーンは怒りを露にした。


「直ぐに隊を編成し、英知の塔へと向かえ!!!
あの獣と小娘を捕まえるのだ!!!」


城にクイーンの声が響いた。