そこで"奪い取ってやろう"って思わないのが、八千代くんの優しいところだと思う。


今まで、ただ悲しい目をして2人のことを見ていただけだったんでしょう?

どうしようもない気持ちのまま、他の誰かに慰めてもらってたんでしょう。


でもね。



「今まで何も出来なかった分、八千代くんの気持ちは、ずっと燻ってるままじゃない。
そんなの、苦しいだけだよ。」

「……」

「少しでもかっこいい姿を見せたって、誰にも文句言われないよ」



パンッと、またピストルの音がグラウンドに響いた。



「……そうやって少しずつさ、出来ることを頑張っていったら、報われるんじゃないかな」



報われなかったとしてもさ、気持ちの折り合いはつくんじゃないかな。



「ね、だから、一緒に頑張ろうよ。
私も手伝うから」