くすっと私に向かって笑いかける梢。
もう。私は梢の恋愛偏差値が羨ましいよ。


その瞬間、校内アナウンスが流れた。
コンテストは終わり、最後に軽音楽部の演奏が始まるという内容のアナウンスだった。


「……私、梓希くんに会いに行って来る」


会って、それから話をしよう。
でもその前に。



「えっ、ちょ、着替えるの?」
「うん。だって今、梓希くん制服着てるだろうし」

「……それ、なにか関係ある?」
「あるよ。梓希くんの彼女は私だもん」



その場でクラスTシャツを脱いでブラウスに袖を通す私を、梢はポカンと見つめる。



「少しでも恋人同士に見えたらいいなと思って。あと、梢のヘアゴム貸してほしいな」
「え?いいけど……」



制服のリボンを結んで、さらに髪を高い位置で結う。
首筋にヒヤリとほんの少し冷たい空気が流れた。


よし。
まってて、梓希くん。