「──腕痛いのもう治ったの?」
「えっ!」



女子トイレの鏡を見ながらリップを付け直す梢。
そんな梢の言葉に慌てて自分の二の腕をおさえる。



「な、なんで急に腕のこと……」
「だって、この準備期間でずっと腕おさえてたじゃない。てっきり痛めたのかと思ってたんだけど」



「違った?」と、そう言いながら梢はポーチのチャックをしめる。
あわあわと焦る私に、彼女は悪戯っぽく笑った。


「その反応……さては八千代関係だね?」
「あう、」
「キスマークでも付けられた?」
「えっ」
「首じゃなくて二の腕に付けるあたり、あいつも中々の変態だね」

「う、し、梓希くんは変態じゃないもん……」