「あ……梓希くん」
紺色のベストを格好よく着こなす梓希くんが、いつものように優しく笑いかけてくれている。
「どこ行くの?」と言うから、職員室にペンキを取りに行くことを伝えた。
「俺も行く」
「えっ、いいの?だっていまミスターコンのことで盛り上がってるのに……」
「いーよ。どうせ断るしね」
「……ええっ!?」
驚く私に、梓希くんは困ったように笑う。
「どうして他の人と恋人同士みたいなことしなきゃいけないの。俺には蓮がいるのに」
階段を降りながら、梓希くんはそう言った。
彼の柔らかな黒髪を見ながら、やっぱり梓希くんは優しいとそう思った。
『その……日向さんのことはどうなったのかな、って』

