八千代くんのものになるまで、15秒



「あ……梓希くん」



紺色のベストを格好よく着こなす梓希くんが、いつものように優しく笑いかけてくれている。

「どこ行くの?」と言うから、職員室にペンキを取りに行くことを伝えた。



「俺も行く」
「えっ、いいの?だっていまミスターコンのことで盛り上がってるのに……」

「いーよ。どうせ断るしね」
「……ええっ!?」



驚く私に、梓希くんは困ったように笑う。


「どうして他の人と恋人同士みたいなことしなきゃいけないの。俺には蓮がいるのに」


階段を降りながら、梓希くんはそう言った。

彼の柔らかな黒髪を見ながら、やっぱり梓希くんは優しいとそう思った。



『その……日向さんのことはどうなったのかな、って』