頬杖をつき、目線は手元の文庫本。

さらりと言われた言葉に、私は分かりやすくピクリと肩を揺らしてしまう。


「え」なんて、間抜けな声だけが出て、そんな私に八千代くんは「分かりやすいなぁ」と目を細めて笑った。




「クラス替えして、初めてこの教室に入った時から視線感じるなぁって思ってたんだよね」

「う、うそ……」

「まぁ、誰に見られてるかまでは分からなかったけど。でもおかげで解決したよ」

「……あっ!?まさか私のこと試したの?」




クスクス、八千代くんは何だか楽しそう。

私はというと八千代くんに翻弄されっぱなしで、もう色々といっぱいいっぱいだ。




「良かったね。今日から隣の席だから、思う存分眺められるよ」

「うぅ……」

「否定しなくていいの?」

「……あ。そ、そうじゃん……」




私の馬鹿。
これじゃあ私が八千代くんのことをずっと見てたって認めたようなものじゃんっ。