「っん、や、やちよく、まって……」
「あ。ほらまた。」
「あっ、い、いまのはなしっ」
「そーいうのはなし。」
「──っ、ぅ……」
授業と授業の間の休み時間、階段の踊り場にて。
『俺のこと下の名前で呼ばなかったらその度にキスするから』
冗談かと思っていた言葉は、どうやら本気だったみたいで。
"八千代くん"と呼ぶたびに本当にキスをされるから、ここ最近は気を付けていたのに。
『あ、八千代くん』
休み時間に自販機で飲み物を買おうと階段を降りようとしたら、
たまたま大好きな彼とバッタリ会って。
ポロッとこぼれてしまった"八千代くん"という言葉に、すかさず反応したやち……じゃない。
梓希くんによって、私はいまキスをされている。