「もしかして、俺と仁の会話、聞いてた?」
「ん……」
「そう。」
生温い風が吹いて、私と八千代くんの前髪を揺らす。
八千代くんは一歩私に近づいて、優しい手つきで乱れた前髪を直してくれた。
「百合さんのこともあったから、倉木も不安に思うことがあるだろうなって……」
「うん、」
「落ち着いたら改めて伝えようと思ってたけど、俺の気持ちは、仁に言った通りだよ」
「どう言えばもっと伝わるかな……」なんて、なぜか八千代くんが不安げな表情をしているのが少し可笑しくて。
十分、伝わってるよ。
「八千代くん」
「なに?」
「手、繋いでほしい」
両手を差し出した私に、八千代くんは一瞬キョトンとしてから、柔らかく笑った。

