八千代くんのものになるまで、15秒



ぶんぶんと首を振って、テーブル席へ戻ろうと店内へと続く扉を開けた。



「あれ?」



テーブル席に八千代くんの姿はない。
仁さんのところで何かお話ししてるのかな?

そう思って入口近くのカウンターへと足を向ける。




「──おまえ、もう百合のことは諦めたわけ」




微かに聞こえた仁さんの声に、ぴたり、足が止まった。

カウンターを挟んで八千代くんと仁さんが話しているのは、百合さんのことだ。


盗み聞きは良くない……けど、どうしても気になってしまう。

向こうからは死角になっているだろうから、きっと私のことは見えていないはず。




「……なんのこと?」
「おまえなぁ……」



ため息を吐いた仁さんに、八千代くんは小さく笑った。