ぶんぶんと首を振って、テーブル席へ戻ろうと店内へと続く扉を開けた。
「あれ?」
テーブル席に八千代くんの姿はない。
仁さんのところで何かお話ししてるのかな?
そう思って入口近くのカウンターへと足を向ける。
「──おまえ、もう百合のことは諦めたわけ」
微かに聞こえた仁さんの声に、ぴたり、足が止まった。
カウンターを挟んで八千代くんと仁さんが話しているのは、百合さんのことだ。
盗み聞きは良くない……けど、どうしても気になってしまう。
向こうからは死角になっているだろうから、きっと私のことは見えていないはず。
「……なんのこと?」
「おまえなぁ……」
ため息を吐いた仁さんに、八千代くんは小さく笑った。

