「やっ、見てたっていうか、偶然見えちゃったというか……!」
本当は八千代くんの横顔眺めてました、とか言えるわけない。
けれど、「"偶然"、ね」なんて八千代くんがクスクス笑うから、本当のことはバレてるんじゃないかと思う。
「……ていうか、つまり、彼女がいるってことで合ってる?」
キスマークのことは否定されなかった。
梢の言っていた通り、私の知らない間に八千代くんに彼女が出来ていた……?
「内緒。」
ゆるり、優雅に笑う八千代くん。
な、内緒って……
「だって、"そういうの"って恋人同士で付け合うものでしょ?」
今更その存在を隠そうとしても……もうバレてるようなものじゃない?
頭にはてなマークを浮かべる。
そんな私の肩に八千代くんはポンと手を置いた。
「な、なに……っ!」
密かに推していた八千代くんに触れられたことで心臓がバクバクと大きな音を立てている。

