目を丸くする八千代くん。
あ、ダメだ。完全にやっちゃったかも。
どうしよう、初会話で八千代くんに引かれちゃった……!
「っごめん!忘れて!何でもないから!」
慌てて八千代くんの腕から手を離し、もう一度謝る。
あー……もう、お願いだから、八千代くん、引かないで……。
「……今日、風強いよね」
俯き、ぎゅっと瞼を閉じていたら、そんな言葉が聞こえた。
「え?」と間抜けな声を出す私に、八千代くんは「油断したなぁ」と腰に手を当て窓の方を見る。
「体育の後、暑くてさ。シャツだけで過ごしてたら急に強い風が吹いたから焦った」
「あ……」
「一瞬のことだったし、誰にも見られてないと思ってたんだけど」
首筋に手を当て、悪戯っぽく笑う。
「倉木は俺のこと見てたんだね」
いつもの柔らかい笑顔とは違う、ほんの少しの"意地悪"が含まれたような、そんな笑顔だった。

