八千代くんの顔、もう見れない……!
パッと顔を逸らし「あ、あの、後藤くん、は……」と何とかそう聞くと、
八千代くんは「あぁ」と、そう言えばそうだった、とでも思っているかのような表情をした。
「面談の日程、後藤と交換してもらったんだよね」
「あ、そうなんだ……」
何か用事でもあったの?
ていうか、八千代くん私の名前知っててくれてたんだね。
あのさ、私八千代くんの横顔が好きなんだよね。
頭の中で言いたいことがぐるぐる回ってる。
回ったところで緊張でどうせ何も言えやしないのに。
「先生に何聞かれた?」
「あ……前の、進路希望調査のこと、とか、クラスのこととか……」
「あー、そっか」と、そう言いながら八千代くんは本を閉じた。
席を立ち、真っ直ぐに私の方へと歩いてくる。
教卓の前で棒立ちになっている私は、そんな八千代くんをただ見つめるだけ。
「じゃあ、またね」

