「“ずっと”苦しいって言うより“更に”苦しいって感じかなー」 「そう、なんだ」 額の汗を拭って相槌をなんとか打つ。 「んじゃあ、次はこっちか」 彼女は右手の人差し指で針山を指す。 彼女が指を指した方向では老若男女性別も関係なく様々な人が手に血を滲ませつつ針山を登っている。 「なんで、皆こんな山を登るの?」 「んーとね、確かその人が今一番欲しい幻覚みたいな物がこの針山の頂上ら辺に見えるらしいんだよね」 「だから、みんなそこに向かって必死に登るみたい」 「なるほど」