「あれ?閻尭(えんぎょう)様?」
数分程血の池の周りを見て回ったところでそんな声が掛かる。
見るとその人は棍棒を片手に血だらけの人を引きずっていた。
大きいけど見た目はあんまり怖くない。
どちらかというと亡者を除いて今まで見た人たちよりは人間寄りの見た目をしている為だろうか。
恐怖心はそこまで湧かない。
それより閻尭って?
「どうしてこちらに?」
「あぁ、お前か。いや、なにそろそろこっちに帰ってくる頃だろう。その前に今の地獄の状態を把握しておきたくてな」
「そうでしたか」
―― 喋り方が違う。
私は彼女の話し方の変わり様に内心の驚きを隠せないでいた。



