桜子と涼介くんが、楽しそうにそんな会話を繰り広げる。

 涼介くんの視線の先には、ジェットコースターのレールがそびえ出っていた。

 思った以上の高さがあった上に、走行中のコースターからはひっきりなしに悲鳴が聞こえてきて、私の胸をさらなる恐怖が襲う。

 あ、あんなのに乗ったら私どうなっちゃうんだろう。

 下手をすると心臓麻痺でも起こして死ぬんじゃ……。

 なんて、最悪の予想が脳裏に浮かんでしまう。

 だけど、みんなの楽しい気分を私のわがままで壊すことなんてできない。

「う、うん。そうだねー。まずはあれに乗……」

 乗ろうか、と私が意を決して言いかけた時だった。

「あー、ごめん。俺と亜澄は観覧車乗ってくるわ」

 千早くんが私の言葉を遮ってそう言った。

 意表を突かれた私は、思わず口を噤む。

 桜子は怪訝そうな顔をした。

「えっ。千早くん、なんで?」

「実は俺も亜澄も、あんまりジェットコースター得意じゃないんだよね」

 思ってもみない千早くんの言葉だった。

 だって千早くん、さっき電車の中では「ジェットコースター楽しみ」って感じだったじゃない。