びっくりしたし心臓のドキドキはいまだに余韻を残しているけれど……。

 私にとってそれは、ニヤけちゃうくらいいいことだったの?

 まだ、千早くんのことよく知らないし、ましてや好きだなんて考えられないのに。

「べ、別に無いよ」

 自分でも自分の心情がよく分からなくて、とりあえず私はそう答えた。

 ――すると。

「ふーん、なんだー。とうとうねーちゃんにも男でもできたのかと思ったのに」

 悪戯っぽく笑ってからかってくる麗奈。

 麗奈は年齢の割に達観しているところがあって、大人っぽい大胆なことを言う節があるのは、とっくに知っている。

 だけどさすがに今の言い方は、私を動揺させた。

「も、もう! 麗奈ってばっ。そんなことあるわけないでしょっ!」

 とりあえず全否定をして、鋭い妹を遠ざけることにした私。

 すると「ごめんごめん。……なんだー、違うのか。つまんないのー」なんてぼやいて、麗奈は私の傍らから去っていった。

 まったくもう、麗奈ってば。

 男でもできたのかと思ったのに、って!

 べ、別にできてないし!

 まだ!

 ……え、まだ?