いまだに浮足立った気分は消えなかったけれど、なんとか玉ねぎのみじん切りを終えた私。

 ――すると。

「……ただいまー」

 そう言いながら居間に入ってきたのは、中学二年生で私の妹の麗奈だった。

 麗奈と私は、全然似ていない。

 お母さん似の私とは違って、麗奈は派手顔のお父さんにそっくりで、美人顔。

 私よりも桜子の方が麗奈とは姉妹っぽいとすら、たまに思える。

 中身も、のんびり屋の私とは正反対で結構あけすけな性格をしている。

 はっきり物を言うし、誰に対しても物怖じしない。

 だけど根は優しいし、常に明るい麗奈のことが私は大好きだ。

 麗奈も私とはよく話してくれるし、姉妹仲は結構いいと思う。

「おかえり麗奈。あんたも手伝ってくれるー?」

 お母さんがいつも通り麗奈に声をかかる。

 わたしは玉ねぎを炒める手を止めて、なんとなく麗奈の方に視線を向けた。

「……うん、いいよ」

 あれ?

 なんとなく、麗奈が浮かない顔をしているように見えた。

 声もなんだかいつもより覇気がない気がする。

「麗奈、どうしたの? なんか元気なくない?」