千早くんは、容赦が無い

「そういえば『ちぇりー』、前に『アオハル』で俺に勧めてくれた曲あったじゃん。最近出た曲だったけど、なんだったっけ」

「えっ、曲……?」

「そうそう、確かジュースのCMで流れているやつだったかな」

 桜子は音楽が好きで、スマホのミュージックアプリを使っていつも最新の曲を聞いている。

 だから「セン」くんにも、「アオハル」で曲をおすすめしていたみたいだ。

 私は好きになったアーティストの曲ばっかり繰り返し聞くタイプなので、最新の流行には正直疎い。

 もちろんCMで流れている曲なんて、私が覚えているはずが無くて。

「あ、えっと……。あはは、なんだったっけかなあ」

「あれ、忘れたの? この前はあんなに大絶賛してたのに」

 適当に誤魔化そうとした私だったけれど、「セン」くんが怪訝そうな顔をした。

 ま、まずい。

 怪しまれているかも……。

 桜子にもっと「アオハル」で「セン」くんとしたやり取りを、聞いておくんだった。

 でも今日の桜子は涼介くんのことしか考えてなかったから、聞きづらかったんだよね……。