千早くんは、容赦が無い

「いやー、だって荒れていた頃の俺を亜澄に知られたくなかったし……。あとこっそり見ているうちに好きになっただなんて、なんか根暗っぽくて気持ち悪いって思われるかもしれないなって……」

「そんなこと思うわけないよ！」

　珍しく後ろ向きなことを言う千早くんだったけれど、私は全否定する。

　こっそりだったとしても、私の内面を見て好きになってくれたなんて嬉しい気持ちしかわかない。

　それに私は、今の千早くんが好きなんだ。

　辛い過去を乗り越えた千早くんが。

　だから以前にどんなことをしていたとしても、この気持ちは揺らがない。

　すると千早くんは、少し意地悪く笑う。

「えー、でもさ。亜澄だって早く言ってくれればよかったんじゃね？」

「え、何を？」

「いや、自分が『ちぇりー』じゃないってことを」

「あ……」

　本当に、千早くんの言う通りだ。

　千早くんが私に過去を言い出せなかったのと同じで、私だって千早くんに「ちぇりー」の件は打ち明けられなかった。