千早くんは、容赦が無い

「うん。実は亜澄のおかげなんだよ。まあ俺が勝手に亜澄の言葉に胸を打たれただけたから、亜澄は知るはずもないんだけどさー」

 ふふっと、おかしそうに千早くんは笑う。

 そんなやり取りだけで、人って立ち直れるのかなって気持ちはやっぱりまだあったけれど。

 当時何もかも投げ出していた千早くんにとっては、私の言葉や見事に再生したミニトマトは、希望を見出すきっかけに繋がったのかもしれないとは思えた。

「で、その後は亜澄のことが気になっちゃって。花壇や校内にいる亜澄をこっそり見てたんだよね。……そしたら友達と話すときはいつも前向きだし、花壇での作業は黙々と丁寧にやってるし。そんな真っすぐな亜澄のことを、俺はいつの間にか好きになってたんだ」

「そ、そうだったんだ……」

 好きになってた、と千早くんにはっきりと言われて、性懲りもなく照れてしまった私はたどたどしく言う。

「俺もその頃にはもう金髪はやめてたし、学校もちゃんと行き始めてたんだけど……。まだちょっと周りにはビビられててさ。だから亜澄のことも怖がらせちゃうかなって思って。……亜澄への気持ちは、はひとまずしまうことにしたんだ」