千早くんは、容赦が無い

 千早くんが私と出会っていたなんて言うから、私が覚えていないだけでもっといろいろな話をしたのかもしれないって思っていたんだけど。

 まさか、そんな些細なやり取りしかしていないなんて。

 どうしてそれだけで私を好きになるんだろう……?

「それでさ。なんだかミニトマトの行く末が気になっちゃって、何日かして花壇を見に行ったんだ。そしたら見事に復活してんの。もう、びっくりした」

 うん、そうだったはずだ。

 私が結構念入りに補修をしたから、ほとんどのミニトマトの苗は再生し、無事たくさんの実を収穫できた。

「それから『折れたように見えても、芯は大丈夫だったりするんだよ。それに例え本当に折れていたとしても、再生することだってあるんだよ』っていう、亜澄の言葉がやたらと思い出されてさ。……なんかまた勝手に自分に当てはめちゃった。一度折れて自暴自棄になった俺だったけど、また頑張れるんじゃないかって」

「え……。じゃあもしかして、千早くんが怪我のことを吹っ切って立ち直ったきっかけって……?」