千早くんは、容赦が無い

「だけど亜澄は言ったんだ。作業する手を止めないまま『まだ分からないよ、補修すれば』って。普通にのんびりと答えてきたから、それだけでちょっとびっくりした。……その時の俺、周りにビビられてて。そんな風に平然と会話する女子なんて、いなかったから」

 その言葉を言った記憶は、確かにあった。

 だけどその時の私は、ミニトマトの苗に気を取られていてから、誰と会話をしたかは気にしていなかった。

 でも、話し終えて相手がいなくなった後、「あれ……今の人金髪じゃなかった? もしかして怖い人?」って思ったような覚えがある。

「驚いてる俺に亜澄は、『折れたように見えても、芯は大丈夫だったりするんだよ。それに例え本当に折れていたとしても、再生することだってあるんだよ』って、はっきりと言ったんだ。だけど俺はやっぱりダメそうじゃんとしか思えなくって、『ふーん』って話半分に聞いて、その場を去ったんだ」

「えっ、それだけ……?」

「うん。俺たちの以前のかかわりは、これだけ」

 驚いて尋ねた私だったけど、千早くんはあっさりと頷く。