千早くんは、容赦が無い

 私はその修復作業をした覚えがある。

「花壇の中をなんとなく見たらさ。なんかほとんどの茎が折れてて、見るも無残で。素人目でみたら、もう育たないだろうなって感じだった。それなのに亜澄は黙々とテープで枝を直してて。……正直、何無駄なことしてんだろってその時は思った」

 ミニトマトの枝は意外に丈夫で、一度折れたとしてもマスキングテープなんかでくっつけてあげれば、再生することが多い。

 少し園芸を齧ったことのある人ならば常識だけれど、何も知らない人からしてみれば確かに無駄な作業に見えるだろう。

「だから俺、思わず言っちゃったんだ。『それ、もうダメじゃね?』って、亜澄に。ダメなのに頑張ってる亜澄にちょっと腹が立ったんだよね。……たぶん、自分の境遇に重ねたんだと思う。もういくら頑張ってもサッカーができない自分に」

「あ……」

 もうどうあがいても、大好きなサッカーを本気でできないと宣告されたばかりだった千早くん。

 確かにそんな彼からしてみれば、私の行動は悪あがきに見えてイライラしただろう。