千早くんは、容赦が無い

　頭に疑問符を浮かべながら考えていると、千早くんは少し悲し気に笑う。

「たぶん、俺と亜澄が以前に出会った時はさ。……俺、今と雰囲気違ってたから。だから亜澄は俺だって思ってないんだと思う」

「今と雰囲気が……。あ、もしかして！」

　千早くんが荒れていて、金髪にしていた時期に出会っていたのかな？

　すると千早くんは私の考えを察したのか、頷きながらこう言った。

「そう。俺が亜澄と出会ったのは、怪我は治ったけどもう一生サッカーを本気でできないって知って、自暴自棄になっていた時。……去年の秋くらいかな。ちょうど亜澄は、今日と同じようにこの場所に――この花壇にいたんだよ」

「この花壇に……」

　そう言われて、ぼんやりと思い出した。

　金髪の少年と、少しだけ話した記憶を。

「その日の前日、台風が来てたんだ。まあ、俺にはどうでもいいことだったけど。サボり気味だった学校に気まぐれで行って、やっぱりつまんねーと思って帰ろうとした時、亜澄は花壇で一生懸命作業をしていた」

　――そうだ。

　確か秋に収穫するミニトマトの苗が、台風でいくつか折れてしまって。