そう、別れの挨拶を。

 もうお別れ。

 仕方がないよ。

 だって、最初から千早くんが好きなのは私じゃなかったんだから。

 今まで一緒に過ごした時間は、本来はあり得なかったんだ。

 そんな悲痛な思いを抱きながら私は走り出した。

「あ、亜澄! 待って!」

 千早くんが私を呼び止める声が後ろから聞こえた。

 だけど私は涙を浮かべながら、それには応答せずにただ駆け足で進む。

 千早くんが追いかけてくる気配を感じたけれど、踏切を駆け抜けたらちょうど閉まり、そのタイミングで彼を撒けた。

 行くあてなんてなかったけれど、自然と私の足は学校へと向かっていた。