私に気を遣わせないために、あえて軽い言葉で話す千早くんを、やっぱり優しいんだなあって思ってしまった。

 桜子は、私と千早くんのやり取りを見て呆れたような顔をしている。

「もう、腹立つくらいラブラブだねー! で、千早くん。しばらくはふたりっきりがいいって?」
 
「そうそう。まだ付き合いたてなんで、俺たち」

「まあ、それもそっかあ。でも、亜澄は私の親友なんだからね! あんまり独り占めしないでよ!?」

「えー、ダメ?」

 千早くんが小首を傾げる。

 その仕草がかわいらしいのにかっこよくて、私はきゅんとしてしまった。

「ダメです。亜澄はあんただけのものじゃないんだからねっ」

「はいはい。じゃ、俺が見てないところでは亜澄のことよろしく頼むよ、桜子ちゃん」

「ふっ、それは任せて。いつか四人で出かけようね~」

「おっけ。……あ、じゃあ俺そろそろ行くわ」

 そう言いながら、私に手を振る千早くん。

 授業の準備などを考えると、千早くんが私の教室に来てもたった数分しかいられない。

 それなのに毎日のように来てくれるんだ。

「う、うん。また放課後ね」