私が大好きなこの声は――。

「ち、千早くん!?」

 いつの間に来たのか、千早くんが私と桜子の傍らにいて、私はとても驚いてしまった。

「あら、千早くん。遠くからはるばるよく来るねー」

 桜子がニヤつきながら言う。

 そう、千早くんはこんな風に一日一回くらいは、私の教室にやってくる。

 千早くんの教室からだと、五分くらいはかかりそうなのに。

「だって亜澄に会いたいじゃん」

 私に微笑みかけながら、千早くんがはっきりと言う。

 千早くんは、付き合ってからも相変わらず容赦が無かった。

「あ、う、うん。来てくれて嬉しい……よ」

 私はいまだに慣れなくて、性懲りもなく顔を赤らめてしまう。

 私だって千早くんに会いに行きたい気持ちは一緒だ。

 だけど、私のとろさだと短い休み時間に千早くんの教室に行って戻ってくるのはかなり難しい。

 千早くんもそれは分かっているみたいで、「理数科は男ばっかで亜澄みたいなかわいい子が来たらみんな興奮しちゃうから、来ない方がいいよ」なんて、冗談交じりに言っていた。