千早くんは、容赦が無い

「体育の授業の数十分間くらいなら、平気だよ。ソフトボールはそこまで激しく走らないしさ。だけどサッカーは……。試合なら一時間以上は走り回るし、ボールだって全力で蹴らなきゃならない。俺の足は、もうそういうのには耐えられないんだって」

「え……」

 言葉を失ってしまう私。

 確かにソフトボールなら、サッカーよりは足を酷使しない気がした。

 つまり、普通に過ごしている分にはなんら問題は無いけれど、サッカーを本気で頑張ることは無理な怪我を負ってしまった、ということらしい。

 そんな……。

 サッカーを頑張っていた頃の千早くんを、私は知らない。

 だけど、緩そうに見えて真っすぐな千早くんのことだから、本人も言っている通り本気で取り組んでいたに違いない。

 そんな千早くんが、ある日突然選手生命を絶たれてしまったんだ。

 想像するだけで、とてつもない悲しみが胸に溢れて。

 私は涙が出そうになってしまった。

「だから……。サッカー部を辞めて、荒れちゃったってこと?」

 涙を必死に堪えながらわたしがそう尋ねると、千早くんは頷いた。