その日の夜。

 晩御飯のちょっと前に麗奈が部活から帰ってきた。

 すると私の顔を見るなり、興奮した様子で詰め寄ってきた。

「ねーちゃん! あの後部活行ったんだけど、例の先輩の前でいつも通り練習してやった! なんかいろいろ言ってきたけど、ほとんど気にならなかったよ!」

「えー! よかった!」

 私は思わず麗奈の手を取って、その場で飛び上がってしまう。

 すると麗奈も「やったー!」と、私と同じように飛び跳ねる。

 そんな風に、少しの間ふたりで歓喜の渦の中にいた後。

「なんかさ、こう思えたんだよね。『何も悪いことしてないんだし、気にしないで堂々としてればいいや』って。こんなつまんないことで、今までの努力が水の泡になるなんてもったいないって」

 麗奈がいつになく真剣な声で話し始めた。

「……うん」

 私もしっかりと麗奈の瞳を見て、話を聞く。